星野リゾート 星野氏のご講演を聞いて

10月8.9日で参加した信州若者1000人会議2016 で、星野リゾート星野社長のご講演がありました。

色々面白かったので書きます。

 

まず、端的に言って、星野さんゴリゴリの頑固おやじでした。

 

お話のメッセージは大きく分けて3つ。

・競争すべし

・官民の関係性について

・いかに健全で良い社会を作っていくか

でした。

 

順番に説明していきます。

まず一つ目、これが一番のキーメッセージでした。「もっと競争すべし」。

企業たるもの競争なしでは良い社会などできない。競争にこそ面白みがあるし、競争してこそ企業が成長する。ということでした。

そして二つ目のメッセージにも繋がるのですが、行政はそういった健全な競争環境を作るために税金を使うべきだと。現行の行政は、とにかく民間がすべきことに介入し過ぎで、かれらが税金をじゃぶじゃぶつぎ込むことによって逆に民間を圧迫しているということに全く気づいていない。最悪だと言っていました。

この境界線はとてもむずかしいと思いました。いかにして民間を活発にするか。それがうまくいかないから行政がやってしまおうという発想になっている、つまり前述の逆の流れになっているのかもしれません。

一つ塩尻の山田さんがおっしゃっていてしっくり来たのがこれ。

「行政の仕事は名前をつけることなんだよ。」

これどういうことかというと、行政の仕事は、民間の事業を横で見て繋いでいくことなのだということです。一歩引いて外から全体を見て、どうしたら社会に良いインパクトを与えられるか、それを常に考えてやっていくことが行政の役割なんだと言っていました。

・・・かっこいい。さすがです。

 

少し話がそれました。星野さんの話は続きます。

最後はいかにして良い社会を作っていくかということです。星野さんは、企業のCSR活動を痛烈に批判しています。自分の事業と全く関係のないCSRは、やることが目的で、やった事実に価値があってそれ以上ではないので、不況時には景気削減の対象になるし、やったことに対して全く責任を持っていないということでした。つまり結果はどうでもいいというわけですね。

そしてこれからの新しい企業の社会貢献のあり方として、CSVがあるという話をされていました。CSVとは(Creating Shered Value)の略で、企業の利益追求の方向性の中に社会貢献も含まれているということです。以前何処かで書きましたが、例えば企業がLGBTの従業員が働きやすいように環境を整えることによって、性的マイノリティのためにもなるし、企業もとしても多様性を受け入れることによりクリエイティブなアウトプットがだせるようになる とかそんな感じです。

また、面白かったのが、もっと規制緩和してAirbnbとかどんどんやったほうが良い という話。星野リゾートとはおそらく競合になるのに、星野さんはそれを肯定します。世界の流れに逆らって、既得権益を守るため規制を強くし入ってこれないようにするというのはまったくフェアじゃないし、そんなことやってたら世界から見放されてしまうと。

そういうわけで、競争は大いにすべきで、厳しいかもしれないけど世界の流れの中で原を決めて戦っていくしかないのだということを強調されていました。

 

最後に、一番おもしろかった質疑応答について。

集まった若者たちは、星野さんのお話に納得がいかない人が多かったらしく、質疑応答では学生たちが立て続けに星野さんの意見に反対の意を表明していました。

だいたい学生たちの主張はこんな感じ。

「競争する社会が人間にとって幸せなのか?人類が目指す方向は、人々の幸せなのではないか」

ということでした。星野さんの主張はやや勝者の思想を感じさせる部分があり、一貫して「健全な環境さえ整えれば、あとは競争するべし。負けても何度も諦めず戦うべし。」という感じでした。

まあその通りなのかなあとも思うしそのベースの中で自分が幸せに生きられる位置を自分で探していくことが競争社会の中で生きるということなのかなあと思ったのですが、

意見を表明した若者たちはこの星野さんの主張に真っ向対立。

自分的にはこれが結構驚きで、自分も社会は人々が幸せになるためにあると思っていて、幸せってなんだろう。とか、社会はどうあるべきなんだろう。なんてことを大学の前半はずっと考えていたのですが、なかなかはっきりとこういう考えを主張する人は少ないと思っていました。

でも今回集まった人達は結構そういう考えを持っていて、なんというか、初めて?いい意味でゆとり世代を感じることができました。

そんな感じで学生は果敢に挑んでいったのですが、星野さんは、「最近こういうこと言うやつ多いんだよな・・」とぼそっとぼやきながら、質問に回答するというか、自分の主張を語るという感じで、次々と質問をした学生たちに消化不良感を残して回していきます。

結局最後までその調子で自分の主張を話し続けて質疑応答終了。質疑応答と言うか、ほとんど講演の延長戦という感じでした。

いや~、星野さん、頑固でした。

 

最後に自分の考えを。

星野さんの言う、競争する社会というのは、そのとおりだなと思うのですが、自分が思うのは、良い競争と良くない競争があるなということです。

一番大切なのは、その企業・業界が解決したいと思っている社会課題を常に先に見据えて事業を行っていくということだと思っています。それがあって、企業間で互いに切磋琢磨できるような関係の競争はとてもいいと思います。

良くないのは、その方向性を見失い、競争に勝つことだけが目的になってしまうケース。この競争の先には、たぶん自分たちの利益しか見据えられていないような気がします。

良い競争でないと、良い社会はつくれないような気がします。

 

余談ですが、最後に自分がちょっと思っていることを。

僕は昔から、同じような企業がいくつもある意味がわかりませんでした。なんで同じことやっているのにいくつも会社が必要なのだろうか。消費者目線に立って、「解決すべき課題に対して必要なこと」で考えると、やることは一つで、複数の会社が同じことをやる必要はないと思います。そうではなく、解決すべき課題に対して必要なことに対して、そこで競争をするのではなく、共創していけばいいじゃないかと。

向かう方向が同じなら、みんなで協力してやっていけばいいじゃないかと、思ったりするわけです。

まぁお花畑とか言われそうですけど。

解決すべき課題があって、それに対するソリューションを考えるのであれば、我先にと競い合うのでなく、みんなで協力していくのが理想なんじゃないかなぁと、東北の復興支援をしていて、色んな団体の事情を見たときに特にそう思った経験があります。

 

長くなりました。

以上、星野さんの講演から、とても色々なことを考えるきっかけを頂きました。